皆さん、こんにちは!「駐在妻ライフキャリア研究所」臨床心理士の原田舞香です。11月も残りわずかとなり、日本では温かいカフェオレやミルクティが美味しい季節になって来ましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
さて、今日は「キャリア・ストレス」という概念についてご紹介させて頂きます。皆様「キャリア・ストレス」について聞いたことはありますか?恐らく「キャリア」も「ストレス」もよく聞く言葉だけど、「キャリア・ストレス」って何だろう??という方も多いと思います。
名古屋大学教授の金井篤子先生は、個人がキャリアを展開する際に生じるストレスを「キャリア・ストレス」と名付け、「キャリア・ストレス・モデル」※注1を提唱しています。これは駐在妻にも当てはまる!と私は思っています。
ちょっと極端な例ですが、駐在妻は夫の海外駐在が決まった時点で夫の勤務先から、以下のような要求をされていると考えられています。
「あなたは夫の海外駐在のサポートのためについて来る存在。現地では必要最低限の語学だけ学んで、夫と家庭に尽くし、帰国してからも生涯同様にしてください。」
「自分のキャリア?何それ??結婚したら女性は家庭でしょ!?共働きでないと経済的に苦しいなら、節約生活して、その辺のパートとかに出ればいいでしょ?」
これまで必死で自分のキャリアを積み上げて来て、生涯に渡って自身の仕事を大切に続けて行きたいと思っている女性がこのようなことを言われたら、一体どのように感じるでしょうか?
仮にこの女性がそこまで自身の仕事にこだわっていないとしても、今のご時世、夫の勤務先が夫を生涯雇用し、十分な給料を支払う保証はどこにもないのです。
こうなると、「キャリア・ストレス」理論の言うところの「個人のキャリア開発志向と職場からのキャリア開発圧力との出会いが不適合」であり、このことにより被差別感や疎外感を持ち、何らかのネガティブなストレス結果が引き起こされる可能性の高い状態が予想されます(ここで、駐在妻にとっての職場は、夫の勤務先と仮定しています)。
「ネガティブなストレス結果」として以下のようなことが起こると考えられます。
〇マイナス思考に囚われる
〇不安、焦燥感が強くなる
〇感情の起伏が激しくなる
〇抑うつ症状
〇体調不良(頭痛、不眠、食欲不振または過食、消化器系不調、生理不順・・・等々)
〇アルコール等の薬物依存
私はこれまでの自身の駐在妻としての経験や、お話を伺う中でこのようなことがあると実感していますが、本研究所ではこの問題について検討し、これから皆様の支援に役立てて行きたいと考えています。
(ちなみにこの問題の根本的解決のためには、日本の企業及び広く日本の社会に対して、時代の変化に合わせて女性に対する考え方・価値観の変革を促していく必要があると考えていますが、少々時間掛かります。)
上記の問題への対策として、信頼出来る専門家に相談し、まず心身の健康状態がある程度整ったら、以下のようなことについて考えて行くことが有効であると考えています。
〇仮に本帰国が〇年後として・・・と大まかな見通しを立ててみること
〇たとえ現地で有償の仕事が出来なくても、自分なりに何かしら有意義な活動をすること
〇たとえ本帰国の見通しが立たなくても、本帰国後に仕事が出来るよう、現地で準備を進めること
以上のように、一見別々に見える「キャリア」と「ストレス」は相互に大きな影響を与え合っており、駐在妻のメンタルヘルスに与える影響が大きいのです。だからこそ、私は臨床心理士として、キャリア構築の視点から駐在妻の皆さんの支援をしたい、それも有償の仕事に就くことだけがキャリアではなく、生涯に渡って構築して行くことの出来る
「ライフキャリア」という視点で、という思いでいます。
この「キャリア・ストレス」について気になる方、「私の場合も当てはまるわ!」と思われる方、「キャリア・ストレスの問題で悩んでいるな」と思われる方は、元駐在妻の臨床心理士がメールでお話お伺い出来ますよ。今は初回無料で承っています。ご相談のお申し込みはこちらから、どうぞお気軽にご利用ください。
末筆となりましたが、この場を借りて、私が在学中の京都文教大学産業メンタルへルス研究所産業心理臨床家養成プログラムで「キャリア・ストレス・モデル」についてご講義頂きました、金井篤子先生に改めて感謝申し上げます。
参考文献:山口裕幸・金井篤子編(2007)やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ よくわかる産業・組織心理学 ミネルヴァ書房 pp.94-95
※注1:「キャリア・ストレス・モデル」はラタック(Latack,J.C.)が「従来ストレス研究で取り上げられてきた職務ストレスや組織ストレスの問題はキャリア・ストレスの問題に集約されてる」と述べていることに基づき、ラザルスとフォルクマン(Lazarus,R.S.&Folksman,S.)のストレス・モデルを援用し、特に個人のキャリア開発志向に注目して、構成した(上記文献より)。
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