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駐在妻はメンタルへルス不全になるリスクが高い。

皆様、こんにちは。

この日曜日はクリスマスから逆算して4週前の日曜日でした。キリスト教ではこの日からが「待降節(もしくはアドヴェント)」と呼ばれ、クリスマスを待ち望み、迎える準備を整える期間となりますが、既に日本の街中は11月の初めからクリスマスムードでしたね。皆様お住まいの地域ではいかがでしょうか。

 

さて、先だって北京の中医クリニックでボランティアをしていたお話をさせて頂きましたが、その際「北京駐在女性のメンタルへルス」というタイトルでセミナーを開催した時にお話しさせて頂いた内容から、今後皆様のお役に立ちそうなトピックを時々ご紹介させて頂こうと思っています。

 

今日はその中から「海外在住日本人女性の中で、いかに駐在妻がメンタルヘルス不全になるリスクが高い存在であるか」についてお話します。

とりわけアジア圏など、日本人が集団で住んでいるサービスアパートメントにおられる方は、「海外在住日本人女性」=皆駐在妻!?のような錯覚を起こしてしまいますが、実は海外在住女性には様々な方がいます。

 

1.民間企業駐在員の帯同家族

2.公的機関派遣員の帯同家族

・・・一括して「駐在妻」(または駐妻)と呼ばれています。いずれの場合も配偶者が現地で勤務するために帯同している

ので、帯同家族である女性は「帯同ビザ」です。

滞在国に拠りますが、「帯同ビザ」のままでは有償での仕事を禁じられていたり、勤務先によっては帯同手当を支給にしているにも関わらすあえて「就労ビザ」に切り替えることに難色を示される場合等があります。

滞在期間は勤務先の辞令次第で、短い人で数か月、長い人は10年以上という場合もありますが、平均すると2,3年という場合が多いようです。

 

3.現地採用者の帯同家族

・・・日本では通称「現地妻」と呼ばれています。配偶者が滞在国の現地採用者であり、中長期的に現地に滞在予定の方です。場合によっては永住される方もおられます。

就労ビザを取ることへのハードルは駐在妻ほど高くないようです。

 

4.民間企業駐在員・現地採用者本人

・・・数は少ないですが、女性で民間企業からの駐在や公的機関から派遣されている方もおられます。「海外で何かをやりたい」「留学してこの国が気に入ったから」という理由で現地企業に就職している女性もいます。

 

5.留学生

・・・滞在国で過ごす目的を持ち、自主的・自発的な理由で来ています。1か月程度の短期留学から数年に渡る留学まで、期間は多岐に渡ります。

 

6.国際結婚の配偶者

・・・滞在国の国籍を有する配偶者と結婚しているため、国際結婚されるということをご自身で選択されているので、その時点で海外生活への覚悟をされていると思われます。国籍を有しており、就労は制限されません。

 

以上、見て来ましたが、この中で現地で暮らす自発的な理由を最も有しておらず、なおかつ先行きの見通しが不安定な女性は「駐在妻」であることがお分かりいただけたでしょうか?

 

「現地妻」の方も、配偶者が滞在国での勤務を選ぶ時点で、どの国に移住するか、何かしらの選択肢があったはずですし、現地での滞在期間は配偶者が現地での仕事を退職するまでなので、ある程度自分達でのコントロールや予測が可能です。

 

滞在国にも拠りますが、もし日本で築いている最中であるキャリアを手放し、現地で暮らす自発的な理由を有しておらず、現地での就労は出来ない、なおかついつまで滞在国にいるのか、いつ帰国するのか、ひょっとして次も別の国や地域への転居となるのか?もし仮に就労を断念して学業や現地での活動を考えたとしても、 先行きの見通しがつかないとなると、出来ることも限られてしまいます。

 

これらの状況を考えると、駐在妻は海外で暮らす日本人女性の中でもキャリアの見通しの立たない、不安定な立場に置かれ、メンタルへルス不全になるリスクの高い層であると考えられます。

既に駐在妻のメンタルヘルスに関する研究はいくつかあり、駐在員より配偶者である「駐在妻」の方が適応に苦労すること(1)、海外在住日本人の中でもハイリスク・グループであるという結果が出ています(2)

 

これは、前回のブログ「キャリア・ストレス」についてご紹介させて頂いた通り、自分で思ったようにキャリアを進めることが出来ない、自分の希望と周囲の期待が異なっている場合、大きなストレスとなることが関連していると考えられます

 

近年、「キャリア」は有償の仕事だけではなく、人生そのものである、と考える「ライフ・キャリア」という考え方が出て来ています。

そこで、たとえ有償での仕事が出来なくても、海外生活は「ライフ・キャリア」の一部なので、「キャリアは分断していない」と考えてみるとどうでしょうか?すると「今は、単に有償で働いている期間ではないだけ」のようにシフトすることが出来ると思われます。

 

そう考えて、私は海外生活の中で「自分にとって納得の行く、ベストな選択」を模索してみるのが最善の策だと思っています。

人の持つエネルギーや情熱は人それぞれ。精一杯の分量は、ご自身のキャパシティというコップの中がいっぱいいっぱいにならない範囲でよいのです。「あの人はあんなことも、こんなこともやっていて、すごく頑張っている」と他の人と比べる必要はありません。そして、私のようにボランティアに邁進するのも一つの道ではありますが、その必要もありません(笑)

 

今日のブログを読んで、「私もキャリア・ストレスある!」と思った方、海外生活を送るご自分にとっての納得の行く、ベストな選択について悩んでいる方、一緒に考えてみませんか?

「駐在妻ライフキャリア研究所」では、元駐在妻の臨床心理士が、メールでお話を伺っています。只今初回相談は無料です、ご相談はこちらから、お待ちしております。

 

引用文献

(1) 小山(矢島)恵理子 2007 在英日本人配偶者の精神的健康にかかわる要因について こころと文化,7(2)pp.165-173

(2) 井村倫子 2006 在バンコク邦人の精神保健と文化変容―駐在員配偶者を中心とした一考察ー こころと文化,6(2)pp.149-155

 

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