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日本産業精神保健学会大会にて発表しました

皆様、ご無沙汰しております「駐在妻ライフキャリア研究所」臨床心理士の原田舞香です。

私がシンガポールに来て4ヶ月、日本人学校は夏休みに入るところです。日本では地震や豪雨、猛暑に拠る被害が続出していると伺っております、被害に遭われた方に心よりお見舞い申し上げます。
 

さて、ご報告が遅くなりましたが、去る2018年6月30日(土)に東京で開催された「第25回日本産業精神保健学会大会」にて「海外駐在員帯同配偶者のキャリアとメンタルヘルスに関する研究の動向と課題」というタイトルで口頭発表をさせて頂きました。

 

この学会には、働く人のメンタルヘルスケアに関わる産業医・心理職・保健師を始めとした専門職の方が多く参加されていて、企業の人事担当者の方や、官公庁の方も一部来られています。

  

今回の発表はいわゆる「文献研究」に関する発表で、今後調査・研究を進めていくことに伴い、これまで既にされている学術研究の動向を分析し、今後の課題について提示する、という内容です。発表の中では「駐在妻」のことを「海外駐在員帯同配偶者」と呼ばせて頂きました。

 

発表の概要は、「近年、終身雇用制が崩壊し、夫婦共働き、女性の就労率は上昇しており、海外駐在の帯同に伴い、キャリアの中断が問題となって来ている。また、キャリアの問題はメンタルへルスの問題に影響を与えていると考えられる。

 

しかしながら、駐在妻に関する学術研究の動向を分析すると、メンタルヘルスに関する研究はいくつかあるが、キャリアに関する研究は少なく、支援もされていない。

 

そのため、今後駐在妻のキャリアとメンタルヘルスに関する現状と課題、どの様な支援が必要とされてるかについて解明していく必要がある」ということです。

 

今回の結果を踏まえ、今後も少しづつ駐在妻の方々の現状や課題についてお伺いし、私自身が当事者として感じている思いと共に情報発信することで、社会にもっと「現代の駐在妻がキャリアの分断の問題を抱えている」という現状や、その逆境の中で奮闘している方達がいることを知って頂きたいと思っています。

 

その先に私が実現したい未来は、「駐在妻が自分らしく生きること、多様性が認められる社会の実現」、具体的目標はまずはせめて、帯同ビザから就労ビザに切り替えてでも働きたい!という意欲のある人を阻む「駐在妻の就労を禁じる規定や暗黙の了解をなくすこと」です。

 

これらの目標のために、どんなことが出来るのか?学会の懇親会で、産業医・心理職・保健師等、働く人のメンタルへルスに関わる専門職の方々ともお話させて頂いていました。女性の就労継続の必要性に関して多くの企業に知ってもらうため、社会に対する啓発活動が必要です。そのため、官公庁とのタイアップなど、もっと組織的な取り組みが必要になるかも知れません。

 

長期的目標は「駐在妻に限らず、広く日本社会の女性が多様性を持ち、自分らしいライフキャリアを歩むことの出来る社会作り」です。現役駐在妻ですとどうしても行動が制限されてしまいますが、複数回の海外駐在への帯同と地方転勤を経験している臨床心理士の一人として、細く長く、このための一助となるような活動をして行くことが、ライフワークとなると確信しています。

  

今回の学会は昨年から準備を進めていましたが、図らずもシンガポールからの参加となりました。金曜深夜から日曜深夜まで、1泊3日の弾丸一時帰国にて参加しました。今回の学会発表に伴い、子ども達の世話を引き受け、送り出してくれた夫と協力してくれた家族に感謝します。

 

なかなかブログに書けませんが、私は今、シンガポール駐在の多くの方が過ごされる「便利で、快適なシンガポール生活」というステレオタイプとは異なる環境で生活しています。このことはいつかお伝え出来たらと思っています。