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シンガポールで駐在妻がこれまでのようには働けなくなる!?

皆様、こんにちは。早いもので日本や各地の日本人学校では年度末を迎えますね。東京は既に桜が咲き始めていると伺いました。いつ日本に一時帰国できるか目途の立たない身としては、日本で桜の季節を過ごせたCOVID流行前を懐かしく思っています。

 (写真:Gardens by the bayのSakura Festivalより)

 

 

さて、シンガポールにお住まいの方は既に聞いておられるかと思いますが、シンガポールでは3月3日に「5月1日以降、DP(Dependant Pass,帯同ビザ)所持者への(Letter of Consent,労働ビザ)が発行されなくなる。すなわち、帯同配偶者としてシンガポールに住む人が働くためのハードルが上がる」というニュースが流れ、シンガポール日本人社会に動揺が走っています。

 

もう少し詳しく話しますと、これまで発行されていたLOC

というビザは、収入の上限・下限などに定めがなく、例えばお子さんがまだ小さい駐在妻の方で、メイドさんを雇ってフルタイムで働くことに、配偶者の方が反対している・・・等のご事情がある方でも、お子さんが園や学校に行っている間のパートタイムでの就業が可能だったわけです(尚、現在LOCを保持している方は、期限まではこのままのビザで就労することが出来ます)

 

しかしながら、今後LOCが発行されないとなると、EP(Employment Pass)もしくはSpassという2つの就労ビザいずれかの取得が必要になります。EPの方は、最低月収がかなり高額に設定されており、例えば私の場合、現在の基準ですと8150ドル以上必要になります。そうするとフルタイム勤務になることはもちろんですが、これだけの高収入で雇って頂くということ自体、かなりハードルが高くなります。Spass の方は最低月収は概ね2500ドル以上と、EPよりはハードルが低いのですが各企業ごとに発行できる人数に限りがあります。そのため、いずれの場合にしても、LOCで就業するよりもかなりハードルが高くなる、ということになります。

 

これは実は、「駐在妻が働きづらくなるのかぁ、残念だな」というだけのニュースではなく、シンガポール邦人社会にとって、日本語リソースの担い手である就業者を失うということで、日系企業や日本語サービスを提供する企業にとっては、これまでのように日本人駐在妻を気軽に雇えなくなり、ビジネスチャンスの喪失に、日本人にとっては、日本語で利用してきたリソースが失われる可能性がある、ということになります。

 

例として挙げられるのは、学校の特別支援学級をサポートして下さっている先生、補習校の先生、ローカル園の日本語担当の先生、塾の先生、ピアノなど日本語で出来る習い事の先生、日系クリニックの受付、看護師等医療専門職、日系の美容系サービス、店舗。飲食店のサービススタッフ、日系企業の受付や事務職の方などは、駐在妻の方がLOCで就労している場合が多いと思われます。私自身はもちろんですが、周囲の働く駐在妻仲間も、コミュニティの方々からも、大変ショックを受けた、という声が聞こえてきます。

 

しかし、よく考えてみると駐在妻が労働ビザを取って働くことが出来る国というのは非常に少なく、シンガポールと香港くらいではないかと言われています。働く立場としても、日本語リソースを利用する立場としても、これまで多くの恩恵を受けて来たのですが、本来であればここは海外なので、これまでが稀有な状況だったのかも知れず、シンガポールもごく一般的な海外の日本人コミュニティになると思えばよいのかもしれません。

 

(私自身も中国・北京で専門職としての活動が出来た時期は限られていましたし、日本語の利用出来る医療機関はあったものの、日本人医師は稀な存在、日本人看護師の方はおられず、通訳の方とやり取りするか、もしくは中国語で乗り切って来ました。)

 

このように、COVID流行の影響がじわじわと出て来て、在留邦人にとって環境が厳しくなる一途ではございますが、コミュニティの皆さんとともに、「今、ここで」出来ることの精一杯を追求していきたいと考えています。

 

参考URL:AsiaX「扶養家族査証の外国人の就労、5月から相応の就労査証が必要に」https://www.asiax.biz/news/57407/

NNA ニュースアジア「家族ビザ保有者の雇用要件強化 5月から、就労ビザ取得義務付け」

https://www.nna.jp/news/result/209#LOC

 

                     🄫 2021 駐在妻ライフキャリア研究所